あなたの野鳥撮影におけるレンズ選びをサポート致します

野鳥撮影のレンズ選び(ニコン・大砲レンズ編)

 

ここでは、このサイトの本題ともいえる野鳥撮影における大砲レンズ(ニコン)の選び方についてお話ししていきます。

 

大砲レンズとは最大径100mm以上の口径を持ち、400mm以上の焦点距離のいわゆる856(ハチゴロ)64(ヨクヨン)、54(ゴーヨン)、428(ヨンニッパ)、と言われている超望遠レンズ群をいいます。100万円近い出費を強いられるため購入に迷っておられるかたも多いと思いますが、筆者の経験に基づいてどのレンズを使うとどういう写真が撮れるのかという観点を踏まえて考察していきます。

 

 

 

グーグル検索などで直接このページに来れらた方は、この記事を読む前に是非とも レンズの焦点距離 と テレコンバータ を参照されることをおすすめします。それらの記事を見られたほうがより理解が深まります。

 

 

購入候補となるレンズの価格・重量をまとめてみます
(AF-SU型より以前のレンズに関しては、メーカーで修理部品を保有していないモデルのため対象外としました)

AF-S ED 400mm
F2.8 DU
重量:4440g  最大径:159mm  中古価格:65万程度
AF-S 400mm
F2.8G ED VR
重量:4620g  最大径:159.5mm  新品最安:91万
AF-S ED 500mm F4 DU 重量:3430g  最大径:139.5mm  中古価格:60万程度
AF-S 500mm F4G ED VR 重量:3880g  最大径:139.5mm  新品最安:85万
AF-S ED 600mm F4 DU 重量:4750g  最大径:166mm  中古価格:70万程度
AF-S 600mm F4G ED VR 重量:5060g  最大径:166mm  新品最安:108万
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR 重量:4590g  最大径:160mm  新品最安:163万

 

※新品最安は”信頼+低価格のお店”として カメラのキタムラ ネットショップ の価格を参考にしました

 

 

続いて、レンズ中心部の解像チャートを掲載します
AF-S 600mm F4G ED VR VS AF-S 500mm F4G ED VR
※焦点距離の短いレンズは、その分近づいて撮影しているので割引が必要です
※テレコン使用時は、撮影距離が近いと差が出にくいので割引が必要です

 

 

 

ニコンのAF-SU型とVR428・AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VRの解像チャートのデータが残念ながらありませんので、MTFを合わせて掲載します。MTFのグラフの見方については、 野鳥撮影でのレンズカタログの見方 の記事を参照ください。
ニコン 超望遠レンズ 比較

 

AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR のMTFグラフ

AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR MTF

 

付属の専用1.25倍テレコンを使用した AF-S NIKKOR 1000mm f/7.1E FL ED VR のMTFグラフ

AF-S NIKKOR 800mm f/7.1E FL ED VR MTF

 


< AF-S ED 400mm F2.8 DU、AF-S 400mm F2.8G ED VR >

428(ヨンニッパ)の愛称で呼ばれているレンズです。”明るいレンズ”のイメージが先行してしまいがちですが、被写体に自由に近づけない野鳥撮影では、ただ”明るいレンズ”という認識ではやや不足かもしれません。”F2.8 + 400mmの範囲が写る + 最大径が159mmのレンズ”と理解しておくと良いでしょう。

 

最大径159mmと市販レンズで最大級の口径ですので、ボケや野鳥の立体感は 64と同等で54より上にも関わらず野鳥撮影では広角といわれる400mmでワイドに写るという特徴を備えているレンズです。400mmF2.8レンズは野鳥撮影では上級者向けレンズであり、このレンズの野鳥の撮り方は大きく2つが候補あります。イメージがこれらにマッチすれば積極的にセレクトしたいレンズです。

 

 

タイプA:風景写真としてのイメージで野鳥を撮る
400mmのワイド感と最大径159mmのボケ味のミックスを利用します。野鳥は小さいのにピントの浅さで浮き出てくるようにして存在感を出しつつ、大きなボケとワイド絵で背景のイメージをやんわりと残す撮り方です。このようなイメージは大口径+ワイドのレンズでしか撮れないので428ならではの表現です。風景写真的な一味違う野鳥写真が撮れます。

 

 

タイプB:飛翔シーンを高速シャッターで捉える
F2.8の明るさで高速シャッターを切り、飛翔シーンなどを捉えたいときに428を使用します。ただし、428の良さを引き出すにはトリミングは基本的にせずノートリで撮れる条件までもってくる事が前提になります。猛禽などの大型の鳥なら30m以内、小鳥なら10m以内までは最低接近しないと表現が乏しくなるでしょう。トリミング前提であれば54や64を最初から用いたほうがよく、このレンズならではの良さが写真に出ません。

 

 

MTFグラフを見ると、焦点距離が短いにも関わらず中心解像力は54、64より劣るようです。テレコンを使用して遠くの野鳥を大きく撮るというのには全く向かないので、タイプA・タイプBのようにある程度撮影イメージや目的がしっかりしている人だけが選ぶレンズです。被写体に近づいたり風景写真としてまとめるだけのスキルが必要ですが、その分技量があれば他人とは全く違うイメージを得やすい上級者のレンズといえます。

 

手持ちで振り回して飛翔シーンを狙う撮り方であれば、手振れ補正付きの AF-S 400mm F2.8G ED VR が良いでしょう。タイプAの風景写真的な撮り方であれば、旧型の AF-S ED 400mm F2.8 DU で十分です。


 

 

< AF-S ED 500mm F4 DU 、AF-S 500mm F4G ED VR >

54(ゴーヨン)の愛称で呼ばれているレンズです。このレンズは139.5mm最大径と大砲レンズ群では口径が一番小さいのでボケ味や立体感には劣るものの、低価格であることと軽量であることが魅力のレンズです。また、428・54・64の中でも一番シャープに写るレンズです。

 

このレンズは超望遠レンズ群でも特に軽量の部類に入りますので、軽量であることを活かした撮り方を心がけると良さが出るでしょう。車の中や草木が生い茂っているような狭い場所や、脚立に登ったり足場の悪いところから手持ちで撮影をしたり、ポイントまでの道のりが険しく荷物をできるだけ軽くしたいなど、軽量であるということはいろいろな状況で恩恵があります。

 

また、ニコンのゴーヨンはシャープに写るのでテレコンを使用して遠くの被写体を大きく撮るのにも向いています。絞り開放ではやや甘いものの、1段絞ればTC-20E3との組み合わせでも多くの方が満足する結果を得られるでしょう。D800EやD4であればTC-20E3を使用してもAFが使えますので更に有用です。最後に、ニコンの428・54・64の中ではこのレンズだけが三脚座が手前側に付いていて、ぶれ難い構造となっています。軽量・低価格・画質良い・ぶれ難いとニコンの野鳥カメラマンの方は余程の理由が無い限りこのレンズのセレクトで間違いないでしょう。旧タイプのAF-SU型は中古市場で殆ど出ず非常に入手困難なため、良さそうな物件がでたらすぐに決断しないと売切れてしまうでしょう。

 

 

 

< AF-S ED 600mm F4 DU、AF-S 600mm F4G ED VR >

64(ロクヨン)の愛称で呼ばれているレンズです。このレンズは最大径が166mmと市販の超望遠レンズ群(一部例外あり)でも最大級の大きさを持っているという事にあります。ボケが強烈でピントが薄いため、被写体を引き立たせたり野鳥の質感などの立体感を表現するのに特に優れています。

 

1.4倍テレコンを利用して840mmF5.6レンズとしても使えますが、絞り開放ではシャープに写らないレンズですので遠距離の野鳥をシャープに撮るには1〜2段は絞って撮る必要があります。ただし、そうすると肝心のボケ味とピントの浅さがスポイルされてしまうため、遠くの鳥を撮るならゴーヨンの方が向いており、このレンズではボケや立体感を写真でいかに表現するかという方向性の方がこのレンズの良さがでるでしょう。そのためにはフルサイズセンサー+テレコン無し+トリミング無しで撮影できる条件までいかに持っていけるかが撮影者に求められるので、そういう意味では AF-S 400mm F2.8G ED VR と同じく上級者向けのレンズです。ただ、カワセミのダイブなど被写体限定で明るさと焦点距離のバランス的に AF-S 600mm F4G ED VR がベストという場合もあります。

 

 

このレンズは大きくて重いので手持ちで振り回すというかたは少数派で三脚使用が前提になると思います。三脚使用が前提であればVR無しの AF-S ED 600mm F4 DU で十分ですが、中古市場にはほとんど流通しない希少モデルで非常に入手困難です。出てきても新型VRタイプと価格差が小さいことが多いですが、稀にでる低価格の良さそうな物件を見つけたらすぐに購入しましょう。

 

 

 

< AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR >

通称”八五郎(ハチゴロ)”と言われているレンズです。一部の例外を除いて市販レンズでは最も長い焦点距離で、更に最高の光学性能を備えたレンズです。光学系では大型の蛍石レンズをフロントに2枚配置し、UDレンズ2枚、更に付属の1.25倍テレコンバーターにもUDレンズが1枚使用されており、2013年1月現在最高性能の超望遠レンズです。これは正に遠くの被写体をシャープに写すのに最適な野鳥カメラマンのために開発されたといってよいレンズでしょう。

 

 

このレンズでの野鳥の撮り方は、@アップで野鳥を撮る、A近接の難しい野鳥を撮る
という2つのタイプにわかれます

 

タイプ@:アップで野鳥を撮る
野鳥を上半身だけ写すなどポートレート風にしたり、爪や大きな瞳など撮影が難しい局部だけをアップで撮るのに  AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR  は最適です。600mm以下のレンズでこのようなイメージは、相当近づいて撮らないと不可能ですが、 AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR  ならそのハードルは限りなく低くなります。また、専用の1.25倍テレコンバーターを使用すれば光学性能をほとんど落とすことなく、 AF-S NIKKOR 1000mm f/7.1E FL ED VR のレンズとして使用することが可能です。超解像ボディのD800Eで15点の測距点でオートフォーカス可能なのが特に魅力です。MTFをみてもとんでもないレベルの画質を確保しているので、2倍テレコンを使ってもなんら問題のない描写性能を示しており局部アップを撮るときには積極的に活用すべきでしょう。

 

タイプA:近づけない野鳥を撮る
野鳥撮影においてほとんどがこれに当てはまると思います。野鳥に近づくと言う一番難しい問題を、このレンズであればいとも簡単にクリアしてくれます。猛禽類まで50メートル以上離れていても、ニコン1などの超高密度のセンサーのカメラを使ってもキチっと写る描写性能は、希望小売価格が200万を超えていてもこのレンズを購入して良かったとほとんどの野鳥カメラマンが感じることと思います…そのくらいこのレンズの遠い被写体への解像力はズバ抜けていると思われます。

 

 

このレンズの欠点は値段が高いことだけです。遠距離の被写体への解像力はこのレンズを使わないとどうにもならないケースがほとんどと思われる上に、このレンズにフルサイズのカメラを使用しても、鳥が大きすぎて困るという状況の方が極めて稀ですから、428・64で撮りたいイメージが固まっているかたや、どうしても 軽量な54で…という方を除いて、殆どの野鳥カメラマンはこの AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR のセレクトで間違いないでしょう。

 

 

高額レンズはどこで買う?
超望遠レンズは非常に値段が高いので、少しでも安くそして信頼できるお店で買いたいものです。筆者が実際に利用したことのある2つのショップをご紹介いたします。

 

 

高額な超望遠レンズは通販ではなく店頭購入したい・・・そんな方には 『 カメラのキタムラオンラインショップ 』 がおすすめです。ネットで注文 → 全国1000以上のお近くの店舗受け取りが可能であり、日本国内では一番多くの地域に出展している大手カメラ専門店です。キタムラネットショップは信頼できる通販のなかでも特に低価格で、キタムラ実店舗での購入より 『 キタムラネットショップ購入 + 店頭受取 』 の方が安いことが多いです。大手カメラ専門店でネット価格かつ店頭受取が可能なショップは他に無く、超望遠レンズの購入先としてはかなりオススメできるショップです。

カメラのキタムラで 超望遠レンズ の価格一覧を見てみる

 

 

 

落下破損や水濡れなどのトラブルが心配であれば、保証内容が充実しているマップカメラで購入するのがベストでしょう。延長保証の掛け金が5%なので、4〜5万円近い出費が発生してしまいますが、保証内容はこのお店が一番だと思います。

マップカメラで 超望遠レンズ の価格一覧を見てみる

 

 

 

テレコンの購入は?
マスターレンズと比べてテレコンバータは低価格ですし、特に非球面レンズを採用した TC-20EV など新しい世代ごとに光学性能が向上しますので、最新モデルを常に使うようにしたほうがよいでしょう。D800(E)とD4の登場でF8でもオートフォーカスが使えるため、 TC-17EU や TC-20EV の需要が高まっているため中古品の流通は減少し価格が下がりにくくなっています。

 

テレコンバータは中古でも新品と価格の差が出にくい機材なので、通販の低価格なお店で新品を買うのがベストと思います。筆者はテレコンの購入は Amazon を利用しています。Amazon ではテレコンが他の通販と比べてもかなり安い価格設定になっています。更にクレジットカードが使えるのが強みで、国内であれば注文から2日以内にほとんどの地域に届きます。ただし、品切れしていると Amazon では入荷までに時間を必要とする場合がありますので、在庫ありを確認してから注文しましょう。最大手の通販だけあって、 「在庫あり」 の表記で注文したら在庫が無かったという激安通販にありがちなトラブルは皆無なので、信頼性は十分です。

アマゾン で TC-17E U の価格を見てみる

アマゾン で TC-20E V の価格を見てみる

 

 

まとめ

AF-S ED 400mm F2.8 DU 被写体に近づく・風景的なイメージでまとめるなどスキルが問われるレンズ
AF-S 400mm F2.8G ED VR 明るさを活かしつつ、手持ちで飛翔シーンを撮りたい方に。テレコン使用は避けたい
AF-S ED 500mm F4 DU 中古相場も安く、軽く、写りも良い。ただし非常に入手困難
AF-S 500mm F4G ED VR ニコンの中ではシャープに写るレンズ。重量も軽く全員におすすめ
AF-S ED 600mm F4 DU 54Uと同様に入手困難だかお得度は低い
AF-S 600mm F4G ED VR シャープさでは54に分がある。64の特徴であるボケと立体感をだすにはフルサイズセンサーのカメラが望ましい
AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR 遂に発売となる究極の高性能レンズ。脅威のMTFグラフを見るとどこまでシャープに写るのか今から実写を見るのが楽しみ。間違いなく品薄になりますので、金銭の都合が付く方はスグに予約しましょう。

 

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