あなたの野鳥撮影におけるレンズ選びをサポート致します

AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR インプレッション

 

2018年9月に、野鳥撮影者にとって非常に魅力的なレンズが発売となりました
『 AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR 』 です

 

 

購入直後のインプレッションとして、皆様に少しでもお役に立てる情報を提供できればと久しぶりに記事を書きました。実際の野鳥撮影における感想も写真と共に載せましたので、購入の一助となれば幸いです

 

 54FL ・ 556PF ・ 旧34 との大きさ比較
AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR 大きさ比較

 

 

AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR は基本的に、旧300mmF4とサイズ感・重量共に非常に似通っています。旧300mmF4を使ったことがある方であれば、実際に手にしなくても左腕への負担をほぼ同じように体感することができると言って良いでしょう

 

画像内にある、黄色い『 I 』の文字の位置が”レンズ単体での重心位置”です。AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR は思いのほか外側に重心があり、厳密に言うと重量の似通っている旧300mmF4よりも構えたときは少し重く感じます。ただ、もともと軽いレンズですから誤差の範囲です。54FLは重量級レンズとしては重心が相当手前にあるので、ニコンの大砲レンズでは最も振り回しやすい機材ですね

 

54FLを手持ちで使っていましたがサイズが比較にならないくらい小さいので、手持ちでの追従、足場の悪いところでの撮影、野鳥からも警戒されにくくなるなど、軽量化・小型化の恩恵は計り知れないものがあります

 

 

 

外観・スイッチ類など
AF-S 500mm f/5.6E PF 外観

 

54FL・556PF・旧34を横に並べた際の比較とその重心位置は見てのとおりです

 

スイッチ類に関してですが、フォーカスリミッターは FULL と ∞-8m の2段切替で54FLと全く同じです。VRは最新のスポーツモード搭載で、D5 や D4s などのレリーズラグの極めて短い機種ではスポーツVRでなければレリーズラグの遅延が生じます。さらに秒間11-12コマ出すにはVRを切るか、スポーツモードにする必要がありますのでかなり重要な機能です

 

続いてはメモリーリコール機能です。記憶したフォーカス位置を瞬時に呼び出す機能ですが、2.0kgより軽いキヤノン・ニコンの超望遠レンズでは初の搭載でしょう。説明書を見る限りフォーカス作動ボタンの位置変更はできないようです。54FLはSC預けでボタン位置を調整できるので、これはちょっと残念でした

 

三脚座は70-200 f/2.8 FLと互換があり、ロック+ノブ締め構造になっているので外れ落ちる危険は少ないでしょう。三脚用のねじ穴は3/4タイプが2つです。三脚座はにぎりやすいとは言えない形状ですね。根元にある『 500mm 』の文字は高額レンズの一員を感じさせてくれます

 

レンズフードは34PFと同じ材質で、コストダウンが見られます。大砲レンズのフードは、しっかり感があり内側の反射を抑える材質など良いものが使われています

 

 

 

 

 オートフォーカス速度
AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR AF Speed
純正・単焦点レンズですので高速性能を期待していた部分です。曇天で少し暗めとAF速度が低下しやすい条件下で54FL・旧34との比較を行いました

 

 比較レンズ

  • AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
  • AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
  • AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR + TC-14EV
  • AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR + TC-14EV
  • AF-S 300mm f/4D

 

 使用カメラ

  • Nikon D5

 

 比較条件
レンズのフォーカス位置を∞に合わせ、およそ4mの位置にある暗い茂みの葉にピントを合わせる速度を比較する。AFスタートとストップウオッチのボタンを同時押しして計測を開始。ピントが合って電子音が鳴り終わるタイミングで計測をストップ。各組み合わせで10回行い平均値を算出。リミッターは不使用でFullフォーカスの状態で計測。カメラは『 D5 』中央の測距点でグループエリアAFを使用

 

 

計測結果です!(10回の平均値)

 

 D5

  • AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR  : 平均 1.08秒
  • AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR : 平均 1.05秒
  • AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR + TC-14EV : 平均 1.55秒
  • AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR + TC-14EV  : 平均 1.53秒
  • AF-S 300mm f/4D    : 平均 0.82秒

 

54FL と 556PF のAF速度に違いは殆ど無いという結論になりました。条件次第で変わる可能性も高いので、この結果だけで判断なさらないようお願いします

 

ただ、追加で言及したいことが2点あって、1つ目は撮影最短距離が 54FL:3.6m  556PF:3.0m と違いがあるので手前側で被写体をロスしたときの戻りは 54FL の方が速いです。もうひとつは 556PF はやはり1段F値が暗い分、暗い被写体に対する合焦率が54FLより落ちました

 

特にテレコンを付けた状態ではかなり明確な差があって、AFスピードが同じでもピントがスッと合うかどうかは何倍もの差があることはお伝えしておきたいです。54FL単体& D5 であれば外側の測距点でもクロスセンサーが機能するので、速度は同じでも全体的な精度と合焦率は大きな違いがあると感じました

 

 

 

 

 ボケ味の比較
PFレンズのボケ味についても述べておきます。以前使用していた『 EF400mm F4 DO IS USM 』はボケが非常に煩わしくとても使えないという経緯がありましたので、54FLとの比較で556PFのボケについて実写比較しました

 

AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR boke

 

 

どのようにお感じになりましたか?全く気にならないレベルではないかと思いますが、54FLをF5.6で撮影したときの方が少しだけボケが大きいというかやわらかい印象を受けました

 

 

AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR boke

 

 

先のは距離が遠かったので近接でもう一枚。やはり、54FLのF5.6の方が少しボケが大きい感じがしますが、PFレンズだからボケが汚いという感じはないと思います

 

 

 

<< 回折レンズのボケ具合 >>

 

過去所有していたフレネルレンズの特徴的な背景ボケのサンプルを用意しました。条件が違うので比較は難しいですが使用感を述べていきます

 

フレネルレンズのボケ

 

初期型の44DOは本当にボケが汚く空抜け以外では使いたくないレンズでした。34PFは44DO初期型と比べると余り気にしないで普通に使えるレベルのボケでしたが、口径が小さいのとテレコンを使う機会が多いのでそれがボケ味を汚くしている印象があります。最近は旧34を愛用しているのですが、これのボケ味が素晴らしいのでVRと小型化を捨ててでも旧型を使いたくなります

 

 

EF400mm F4 DO IS U ボケ
EOS-1DX MarkU EF400mm F4 DO IS U USM
400mm F4 - SS1/200 - ISO800

 

ここ数年愛用していた44DOU型ですが、初期型とは比較にならないくらいボケが綺麗でシャープネスも素晴らしいレンズでした。キヤノン機なら間違いなくメインレンズです。紅葉と雪というメモリアルなシーンも撮らせてもらいました

 

 

 

500mm f5.6 pf ボケ
Nikon D4s AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR
500mm F5.6 - SS1/250 - ISO1800
撮影距離:30m程度

 

先の44DOUのサンプルと比較して欲しいのですが、556PFは回折レンズでもついにここまで来たかというほどボケが綺麗です。このレンズは本当に屈折レンズとの違いがわからないボケ味で素直に感動しました。44DOU型でもかなり良くなっていると思っていましたが、これを見てしまうと「軽いから多少は仕方ない」という妥協があった上で良くなっていると無理やり納得させていたように思います

 

距離は30m程度でしたがシャープネスも抜群です。今回はサブ機D4sでの撮影でしたが、ISO1600以下であればD5よりD4sの方が描写が優れている印象です。モズのお腹の部分とかハイライト部の表現が素晴らしく、被写体が小さいのに存在感が際立っていてこの写真は一目でもの凄く気に入りました

 

 

 

 

<< TC-14eVを付けてセイタカシギを撮ってみた >>

 

なかなか撮影に出る機会がなかったのですが、短時間だけ 500mm f5.6 PF + TC-14EVでセイタカシギを撮ってみました。簡単にですが使用感などを述べていきます

 

・サンプル画像クリックで、長辺1800pxの拡大画像になります
・トリミングしてません(群れ飛ぶ画像のみ 16:9 に上下部分をトリミング)
・撮影距離は感覚的なものです
・画像調整をしています

 

 

500mm f5.6 pf セイタカシギ
Nikon D5 AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR + TC-14EV
700mm F8 - SS1/1000 - ISO12800
撮影距離:15m程度

 

少し距離がありますが、3羽の並びがとても綺麗だったので思わずレリーズ。距離があってもテレコンを付けてもシャープネスは全く問題ないです

 

MTFグラフや他にもシャープさのテストは随所で行われているので等倍画像のアップは止めておきます。ズームレンズとは違い、大砲レンズと同じシャープネスを備えていると思います。この画質を1.4kgで扱えるのがとても有難いと感じました

 

 

 

 

500mm f5.6 pf セイタカシギ幼鳥
Nikon D5 AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR + TC-14EV
700mm F8 - SS1/8000 - ISO12800
撮影距離:7-8m程度

 

日が昇るタイミングで1羽がこちらに向かってきたので連写しました。テレコン使用で開放F8になるとD5のAFをもってしても外側の測距点では掴みが急に悪くなり、メーカー推奨ギリギリの中央から上に3つ目の測距点をセレクトしダイナミック25点AFで頭部に合わせました

 

このカットはセイタカシギの頭部の位置がちょうどよい感じになりましたが、もう少し上の測距点を使いたい場面も多くテレコン使用の弊害を感じるシーンとなりました

 

また、一番気になっていたPFレンズのボケ具合ですが、このレンズは実用上全く問題ないと感じています。キヤノンのDOレンズも含めフレネルはギザギザ構造の為かボケが汚くなる傾向があって、テレコンを使用するとそれが助長され使用は躊躇していましたが、良い意味での誤算でした。これなら描写的に54FLと区別出来る人はなかなか居ないでしょう

 

 

 

 

500mm f5.6 pf セイタカシギ群れ飛ぶ
Nikon D5 AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR + TC-14EV
700mm F8 - SS1/640 - ISO12800
撮影距離:30m程度

 

群れで急に飛び立ったのでフレーミングに意識を集中して連写しました。これは軽量のありがたみを一番感じた1枚です

 

枠内ぎりぎりのフレーミングを継続するのにスポーツVRのファインダー安定性とファインダー消失時間の短いD5のミラー機構、キッチリ枠内に4羽を入れ続けられる軽量レンズ、この組み合わせでなければ自分の力量ではこれは撮れなかったと確信しています

 

厳密には少し左寄りのフレーミングが理想ですが、そこまで追い込むのは贅沢というものでしょう。戦闘機などの高速移動する被写体のフレーミングにこだわる撮影をする方にはこの扱いやすさは大きなアドバンテージとなるのではと思いました

 

 

 

 

500mm f5.6 pf セイタカシギのアップ
Nikon D5 AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR + TC-14EV
700mm F8 - SS1/1250 - ISO1600
撮影距離:6-7m程度

 

静かにしているとすぐ近くまできて食物探しをしてくれました。フードが短く小さいレンズなのでセイタカシギが近距離に居ても、少しレンズを動かしたぐらいでは警戒されることが無く、しばらく撮影を続けることが出来ました。超望遠・高性能・高機動力・野鳥に警戒されにくい、これら条件を全て揃えるのはこのレンズしかないでしょう

 

またフォーカスはAF-Cのダイナミック153点で撮影していますが、ほぼ正確に頭部のピントを拾ってくれて歩留まりが非常に良く、殆どがOKカットなので一番好みのポーズとバックの光を選ぶことができました

 

テレコン使用時のAF速度低下はかなり感じられますが、近距離シギの頭部の動きも高確率で拾ってくれているので性能的に不満は全くありません

 

 

 

 

500mm f5.6 pf サギ
Nikon D5 AF-S 500mm f/5.6 PF ED VR + TC-14EV
700mm F8 - SS1/2000 - ISO3200
撮影距離:4-5m程度

 

最後は気がついたら目の前にいたサギのアップで。大砲レンズと何が違うかと言われれば、ピントの深さと立体感の乏しさではないでしょうか

 

大砲レンズでこれを撮ると本当に目にピントの芯がいって嘴と頚部はグワっとボケていく感じになるはずです。この条件なら迫力ある映像になると思って撮っていましたが、帰宅後にパソコンで確認してちょっとガッカリした一面でした。口径が小さいレンズ+テレコン使用なので仕方ないのですが、これはテレコン外して最短付近まで寄る努力しないとダメだなーと思った1枚です

 

 

 

 

1時間程度の撮影でしたがかつてない好感触で、500mm f/5.6 PF は野鳥撮影には本当に素晴らしいレンズです。描写性能・優れた機能・軽量、そして、とにかくサイズが小さく警戒されにくいのがいちばん嬉しいところでした

 

いくら描写が優れていても大口径レンズは警戒されます。セイタカシギも警戒心が強いですが、いきなりの近接ですらスムースに行えたので驚きました。近距離のドキドキ・ワクワク感というのは最も幸せを感じられる貴重なひとときだな、と思いながら夢中でレリーズしてました

 

2018年10月現在で納期は約2ヵ月待ちとの事。今からの予約でも冬のシーズンには間に合います。入手しやすい値段とは言えませんが、一眼レフで野鳥を撮りたい方は初心者・上級者を問わず買って間違いのないレンズと思います。今から冬シーズンが楽しみな状態なので、予算の少々厳しい方でも是非とも入手を検討してほしいと思います。本当に素晴らしいレンズです

 

 

 

カメラのキタムラで AF-S 500mm f/5.6E PF ED VR の値段を見てみる

 

アマゾンで TC-14EV の値段を見てみる

 

 

 

 >>>> トップページへ戻る


sponsored link