あなたの野鳥撮影におけるレンズ選びをサポート致します

200mm/F2 で撮る野鳥写真

 

 

このカテゴリでは、系統立ててレンズの違いを説明するのではなく、完全に個人的な思い入れで各スペックのレンズを使って感じたことを好き勝手に書いてみようと思います。

 

 

まず初めは、筆者が特にお気に入りの”必殺レンズ”である『 EF200mm F2L IS 』での作例を中心に『 200mm F2 』スペックのレンズについてお話します。

 

 

 

 

 筆者は、撮影に際して『 他の人と同じような写真 』『 どこかで見たことあるような写真 』というのを特に避ける傾向があります。他の人が既に撮っているなら『自分がそれをわざわざ撮る意味が無い』との考えが強いからです。『 200mm F2 』スペックのレンズは野鳥撮影では殆ど使用している人が居ませんから、これで何か撮影できればそれだけで『 プレミアムな写真 』になりうる可能性が高いのです。

 

 しかし、筆者が初めに『 200mm F2 』スペックのレンズ( AF-S VR 200mm F2G ED )を購入した理由は、単に『 F2 』の明るさにあこがれて暗所での撮影に使用してみたいという事からでした。購入時に機材に詳しそうな人が運営しているブログに相談したのですが、『 200mm F2 は野鳥では使えない 』とあっさり断定されてしまい、実際に使用してみたところ、そのコメントどおり余りにも野鳥が小さくしか写らず自分でも『 使えない 』という結論に至り、数ヶ月使用しただけで売却してしまいました。

 

 それから数年が経過し、さまざまな機材を使用し続け野鳥をどのように表現するかという事に意識を向けていると、ふとこの『 200mm F2 』スペックのレンズをどういう風に使えばよいかということが頭に浮かび、再度このスペックのレンズ( EF200mm F2L IS )を購入することにしました。さまざまな超望遠レンズをこれまでに使いましたが、それらの使用経験を踏まえた上で特に極端なこのレンズを使用すると他の超望遠レンズがどのようなものであるかという理解が更に進み、このサイトを作ろうという原点にもなった特に思い入れのあるレンズです。

 

 

それでは、この『 200mm F2 』スペックのレンズが
野鳥撮影ではどういうレンズなのか作例をあげてお話していきます。

 

野鳥撮影でのEF200mmF2LIS近景
※遊歩道にひょっこり出てきたルリビタキの巣立ち雛。”小鳥の雛”なので被写体を大きく写すと”かわいらしさ”が失われるということと、ひょっこり出てきた感を出したいので歩道を含めできるだけ周りの情景を多く写しこみたいという2つのポイントがある。

 

 

 レンズ選び・キヤノン中望遠レンズ編でも述べていますが、このレンズの特徴は大口径望遠レンズのなかでも一番ワイドに写るということに尽きます。上記作例でも被写体となる野鳥は画面全体の構成の中でとても小さいのですが、この大きさでも『 野鳥の体にピントを合わせると尾羽はボケる 』というくらいピントが浅い写真になります。ワイド感+ピントの浅さで多くのエリアを描写しつつも、背景のボケ量の大きさで被写体を浮かび上がらせるという写真は、このレンズでしか表現できないイメージです。

 

 上記作例をもし、『 EF70-200mm F2.8L ISU 』の200mm側で撮影していたとするとどういうイメージになるでしょうか?200mmの開放F値が2.8と『 200mm F2 』の開放F値より1段絞った状態のボケ量になってしまうので、背景がややはっきり見えるようになってしまい被写体が浮かび上がるような度合いがかなり損なわれます。被写体が小さくボケ量が少なければ、主役が背景に埋もれがちになってしまいます。

 

 更に、上記作例を『 EF300mm F2.8L IS 』で撮影したとするとどうでしょうか?『 200mm F2 』と『 300mm F2.8 』は口径がほぼ同じ(厳密には328の方がほんの少し大きい)なので開放F値のボケ量もほぼ同じです。すなわち、ボケ量がほとんど変わらず周囲部分を1.5倍画角でトリミングしたようなイメージになります。『 200mm F2 』をAPS-Cサイズセンサーで撮影したイメージが『 300mm F2.8 』のフルサイズで撮影したものとほぼ同じと考えるとわかりやすいでしょう。

 

そして、上記作例を1.5倍画角でトリミングするとどういうイメージになるでしょうか?周囲が切り取られる分、被写体が大きく写って目立つようになり背景の描写が失われる事になります。どちらかというと『背景はいいから、とにかく野鳥を見てください』という感じのイメージになってしまうでしょう。猛禽類のような大型の野鳥であれば、バーン!と大きく撮って迫力を出すのは有意義ですが、今回の被写体は小鳥でありしかもその幼鳥です。どちらかと言えば、幼鳥特有の”かわいらしさ”を表現するために小さく写すほうが好ましい被写体です。この状況をもし428以上の長いレンズで撮っていたとすると、ドカン!と巨大な幼鳥が写ってしまい、被写体の魅力を引き出すのではなく『撮影者は、ただ大きく撮りたかったんですね』というイメージになってしまうでしょう。

 

 

 

つづいて、別の作例をご紹介します。

 

野鳥撮影でのEF200mmF2LIS遠景
※亜高山の樹上でさえずるルリビタキ雄。遠景にも関わらず背景のボケ量があり、かつピント面がシャープで強調されていることと、山の木々が多く写りこみ被写体の好む環境が表現されているという2つのポイントがある。

 

 

 今度の作例は遠景です。開放値F2でピント面が浅く背景のボケ量が大きいので野鳥がこれだけ小さくても存在感がでているのがおわかり頂けると思います。そして200mmのワイド感で被写体が好む木々の状況や背景の斜面に並ぶ濃い樹木帯、更に右上の方にはうっすらと雲がかかり高所であることをうかがわせています。これを『 EF70-200mm F2.8L ISU 』の200mm側で撮影していたとするとボケ量が乏しくなり、被写体はかなり背景に埋没してしまいます。そして『 EF300mm F2.8L IS 』で撮影したとすると中心の樹木だけが印象に残り、背景はただ深い緑なだけの単調なイメージになるでしょう。

 

 風景写真の遠景では絞って撮影するのがセオリーですが、野鳥撮影では小さい被写体をクローズアップしたいので全く状況が異なります。また、キヤノン・ニコンともに『 200mm F2 』スペックのレンズは妥協の無い最高クラスの光学性能をもっているので開放F値で遠景を撮影してもピント面は極めてシャープに写ります。絞らないとシャープに写らないレンズではこのイメージは成立しないので、たとえ高額でもこれだけの光学性能があることには大きな意味があると言えるでしょう。

 

 

 

 『 200mm F2 』 レンズのピント
 このレンズの難しいポイントのひとつは、”被写体が小さくピントが浅い”ためにフォーカスが極めて合いにくいという点です。先の幼鳥の作例でも、被写体がこんなにも小さいのに、もはや尾羽にはピントがこないくらいの浅さなので、オートフォーカスでもマニュアルフォーカスでもピント合わせはかなり運頼みに近い状態です。たとえトマリモノでもAIサーボやコンティニュアスで何枚も連写しないとヒットは得られません。今回は『 EOS6D + EF200mm F2L IS 』の組み合わせで撮りましたが、キヤノンかニコンかでいうと、ニコンのカメラの方がこういう状況ではピント精度が高く、『 D800E + AF-S 200mm F2G ED VRU 』の組み合わせの方が『 200mm F2 』の写真としては解像力も高く理想的だと思います。(資金があれば筆者も買い換えたいです)

 

 また、遠景の作例のような状況では、もはやオートフォーカスではほぼ確実にピントが外れます(笑)。マニュアルフォーカスでもフォーカスブラケッティング?をして撮影しないとピント面をシャープに捉え真の光学性能を発揮することはできないでしょう。こういう場合は、ライブビューでピントを合わせるのがベストです。

 

 

 

 画作りの難しさとプレミアム感
 『 200mm F2 』スペックのレンズは野鳥を大きく撮るレンズではないので、撮影者側に『 野鳥が極めて小さくても被写体が印象に残り、更に全体としてある程度まとめる 』という能力が必要な、完全に上級者向けのレンズです。また、『 200mm F2 』でまとまった画にするには背景や光の状況が極めて優れているか、相当野鳥に近づくことが出来るという極稀なチャンスがあって初めて用いることができるレンズです。もしかすると、相当近接できる状況でもアップで撮るのは諦めるという精神的な余裕も必要かもしれません。それには余程の状況予測ができるか、滅多に遭遇しないチャンスの為に常に重たいレンズを持ち歩くという相当の試練が必要なのです。

 

 しかし、そのチャンスが巡ってきてこのレンズで撮影したものはその試練に比例した『 相当のプレミアムな写真 』になります。冒頭で述べた『他人と同じような写真は撮りたくない』という筆者の強い意志が、それだけの試練を経てもこのレンズを用いようという気にさせてくれる、まさに『 必殺レンズ 』です。

 

 

 

 『 200mm F2 』 の中古はお得
 最高の光学性能を持つ『 200mm F2 』スペックのレンズは新品では60万円以上のプライスがしますが、野鳥撮影以外でも使いこなしの難しいレンズと言われていますので使用を諦める人も多いのか中古品はかなりのお買い得なプライスです。アベノミクスや円安効果でデジタル一眼レフや交換レンズは高値安定傾向が続いていても『 200mm F2 』はその性能に比べてかなりお買い得と言えるでしょう。現行モデルの『 EF200mm F2L IS 』『 AF-S 200mm F2G ED VRU』でも50万以下の価格で購入できますし、ニコンの旧型である『 AF-S VR 200mm F2G ED 』であれば35万以下で購入できます。光学構成は現行モデルと変わらず D800E との組み合わせが理想的なので、野鳥を大きく撮ることにマンネリ感を近頃感じている、或いは人とは違ったイメージにチャレンジしてみたいという方にオススメです。

 

 

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