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タムロン 150-600 ニコン用・実践レビュー

タムロン 150-600mm ニコン用の発売日である 4/30 に何とか当レンズを入手できました。早速、翌 5/1 に夏鳥の渡りの中継地である公園に撮影に赴き D7100 と D800E を用いて、実際に野鳥を撮影してみました。

 

主にキヤノン機と各カメラ毎における使用感を、できる限り客観的にレポートをしていきますが、個人的な経験に基づいてのコメントもありますので、あくまでも一例として参考程度に読み進めて頂けると良いと思います。少しでも皆様の野鳥撮影におけるレンズ選びの参考になれば幸いです。

 

 

 

 『 D7100 』 タムロン 150-600mm 実写撮影サンプル
まずは『 D7100 』にて撮影を行いました。APS-C機としては最強の -2EV対応オートフォーカスと51点測距により発売前から大きな期待を寄せていた組み合わせです。キヤノン機でタムロン 150-600mm を使用するとピントの打率が純正レンズにかなり及ばないので、その点でもニコン機であればこのレンズの欠点をカバーできるのではないかとタムロン 150-600mm ニコン用の発売を心待ちにしていました。それでは作例と共に使用感を述べて行きたいと思います。今回も、全画像全て手持ち撮影です。

 

また、画像クリックで得られるフルデータはトリミングしておらず、全て ViewNX2 で露出調整(最大±1EV以内)の上、『 輪郭強調 1 』でTIFF出力しています。その後フォトショップにてコントラスト、カラーバランス等を微調整してからJPEG出力しました。『 シャープネス 』は一切手を加えていません。

 

 

 

※このサンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用サンプル ホオジロ
キヤノン機でかなり使い込んできた タムロン 150-600mmですが、ファーストショットから大きな違いを体感することになりました。オートフォーカスがとにかく遅いという事です。感覚的には、EOS70D で撮影しているときより0.5秒程度遅れてピントが合う感じです。特に、バチピンになる一歩手前からの精度の追い込みに時間を掛けているようで、キヤノン機の使用に慣れていると『まだなの?』という思いがつい出てしまいました。

 

しかし、撮影された画像のピント精度は見事なものでした。『 EOS 70D + タムロン 150-600mm 』の組み合わせとは比較にならないピント打率の良さです。追い込みに時間を掛けているだけのことはあると強く思いました。キヤノンのカメラでは純正レンズでなければ発揮できないピント精度を、ニコン機ではサードパーティであるタムロンのレンズで実現していると思います。タムロン 150-600mm はレンズの描写性能自体は優れているものの、キヤノン機ではピント精度の問題で能力を発揮しずらい状況下にありましたが、これは今後の撮影に大きな期待をもって望めそうだと思いました。(タムロンはニコンにレンズを OEM供給しているという話もあり、相性自体は悪くないのではないかという事も考えられます)

 

もうひとつ、大きな副産物がありました。VC の効きがキヤノンモデルより明らかに良いのです。キヤノン機との組み合わせでは、手持ちでは1/250秒以下では相当打率が下がるのですが、ニコンモデルでは1/250秒では5割近い(或いはそれ以上)良像率の高さでした。ファインダー像の安定感は、キヤノンモデルと余り変わらない感じなのですが、とにかく撮影した画像が余りブレていませんでした。D7100はミラーショックが極めて小さいカメラでもありますので、その影響が大きいかも知れませんが、近いうちに純正レンズと同条件で手振れ補正効果のテストは行う予定です。

 

このホオジロは 8m 程度の近距離での撮影でしたが、ローパスレス機ということもあり解像力はかなりのものがあると思いました。画像クリックでフルデータ(6000×4000ピクセル)が見れますので、オリジナルデータを是非確認してみてください。APS-C2400万画素をしっかりと受け止める描写性能がレンズにあることがお分かりいただけると思います。

 

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル エナガ
つづいてのサンプルはエナガです。少しエナガが影になるような状況なのでオートフォーカスが効き辛い条件ですが、-2EV対応を謳っているだけあり何の問題もなく一度でピントが来ました。ただし、フォーカスの追い込みに時間を掛けるので、エナガのような動いては止まってを繰り返すような小鳥の撮影はキヤノン機に比べ撮影が難しいように感じました。

 

キヤノンモデルでは、手前側のデフォーカス状態から奥の方へフォーカスが動く際に固まってしまい動かなくなる症状が頻発しますが、ニコンモデルではそのような状況は殆ど起きませんでした。ニコンモデルの場合は、デフォーカス状態で迷う場合は最初から全くフォーカスが動きませんので、マニュアルで少し動かす必要があります。ただし、キヤノン機との比較では発生頻度が極めて少なく殆ど気にすることはありませんでした。スピードが遅いことを除けば、フォーカスの動きは特に問題ないと思います。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル オオルリ雌
オオルリのメスが枝に来ました。少し背景の枝が煩い感じがしましたので、できるだけスッキリさせるような位置にオオルリを持ってくるように構図調整をしました。D7100は、APS-C機では最強の51点の測距点を備えているので、構図の自由度が非常に高いです。実際、EOS7Dや70Dの19点AFでは、微妙に調整が効かずフォーカスロックに頼って撮影する機会もありました。

 

測距点が多いということは、多点測距で飛びモノ撮影を撮る時にも有効ですが、とまりものでも微妙な構図調整をしつつピントが合わせられますので点数が多い事はとてもありがたい機能です。中央の測距点でのフォーカスロックでも余裕がある状況ならば問題ないですが、いつ飛んでしまうかわからない野鳥撮影では一瞬の操作が命取りになる事もあります。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル シジュウカラ
早朝のまだ暗い時間帯に撮影したシジュウカラです。まだ、手振れ補正の効きに確信が持てず不安を感じていた段階でしたのでシャッター速度はキヤノン機を使うときと同じ1/250に設定していました。感度が大幅に上昇してしまい、画質が荒れています。D7100は高感度の画質がウイークポイントで、この点はライバルのEOS70Dに及ばないポイントです。

 

先に述べたとおり手振れ補正の効きがよいので、とまりものであればキヤノンモデルよりシャッター速度を落とせますから、この後の撮影は1/160を基本に設定を見直ししました。

 

また、D7100のもうひとつのウイークポイントはバッファの少なさです。RAWでの撮影では僅か6〜7コマで連写ができなくなります。更に ISO 3200 などの高感度を使用するとノイズリダクションが自動でかかるようになるために、更にバッファが少なくなってしまいます。この時は SanDisk Extreme 45MB/s タイプのSDXCカードを使用していましたが、書き込みが待ちが多くとにかくイライラさせられました。

 

D7100 は高速書き込み対応規格の『 UHS-I対応・SDカード 』のデュアルスロットのタイプではありますが、書き込み速度はCF程の期待はもてず高感度はとにかく使いづらい機種であることは間違いないでしょう。決定的なチャンスを逃さないためにも、SanDisk Extreme Pro 95MB/s タイプなどメディアはできる限り最高クラスのものを用意すべきだと思いました。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル アトリ
樹上で採餌行動をするアトリを間近で撮影できました。近距離で撮影した画像の解像感は、タムロン 150-600mm でも純正大砲レンズに引けをとらないくらい良いと思います。これくらい撮影距離が近いと、大砲レンズではレンズの最短限界以内に入ってしまい撮影ができない事がまれにありますが、タムロン 150-600mm であれば最短は 2.7m と 600mm レンズとしては最も寄れるクラスのレンズでありこのような状況でも余裕をもって撮影が可能です。野鳥が大きすぎて困るというときは、その場でズームアウトすることも出来ますので、寄れれば寄れるほど良さが活きてくるレンズとも言えるでしょう。

 

また、樹上を頻繁に動き回るので、1点・AF-C モードで撮影を行いましたが何とかベストショットを捉える事が出来ました。このくらいの近距離の場合は、少し動いたり、首を動かしたりしただけでピントがずれてしまいますので、AF-S よりも AF-C モードの方がヒット率上昇につながります。多少距離がある場合でも、シジュウカラ・エナガなどのカラ類や、キクイタダキ、メジロ、シギチドリ類など頻繁に動き回るような野鳥の場合は AF-C モードが極めて有効です。抜けた背景であればダイナミック9点や21点など測距点のエリアを広げられるのも D7100 の優位点です。APS-C機最強のオートフォーカスは野鳥撮影において非常に頼もしい機能だと改めて感じました。

 

鳥の向きが変わると構図を変更したいのでAFポイントも頻繁にずらしましたが、バッテリーグリップ MB-D15 に縦位置のセレクターが付いているのでスムースに操作ができたのも D7100 のメリットだと強く思いました。縦位置での手振れを防ぐ意味でも、MB-D15 は装着したほうが良いと思います。(キヤノンは APS-C機で縦位置のマルチコントローラーが付いている機種は2014年5月現在で存在しません。)

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル オオルリ
少し小雨が降るような悪天候のなか、オオルリが降りてきて雰囲気のよい小枝にとまっています。肉眼で見ても、ハッとするような美しい濃い目の瑠璃色が飛び込んできました。はやる気持ちを抑えながら、飛ばないようにもの凄くゆっくりと背景の抜ける場所に移動し撮影を開始しました。

 

周りの雰囲気がとても良かったので、オオルリに近づく必要はなくむしろある程度距離をとって撮影をしたい状況でしたが、15m も離れるとこのタムロン 150-600mm のレンズではキヤノンモデルでのこれまでの使用経験上、ピント精度に大いに不安がありました。特にこのような曇天の木陰で更に被写体がやや暗めの体色であるため、タムロン 150-600mm のキヤノンモデル + APS-C機ではピントを外す確立が極めて大きく、EOS 6D の中央測距点であれば・・・という考えがよぎりました。ニコンモデルではピント精度がよいのが朝イチの撮影で確認できていたため、祈るような気持ちでシャッターを切りました。

 

20枚程度はレリーズできたでしょうか。ほどなくしてオオルリは飛び去りました。さぁ、しっかり撮れているかカメラのモニターで画像チェックです。・・・ ・・・ ・・・ ・・・ バッチリです!。ピントは問題なし、1/160でも手振れしているのは半分程度でいわゆる OK カットが10枚ほど残りました。その10枚の中から選んだ画像がこの1枚です。オオルリが少し上を向けば眼にキャッチが入りやすくなりますが、上を向くと頭部の瑠璃色の部分が少なくなります。頭部の瑠璃色を残しつつ、眼がしっかり出ている絶妙なバランスのカットはこの1枚のみでした。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル ジュウイチ
別の日の撮影サンプルを追加します。この日は、殆ど野鳥らしい野鳥を見ることなく日没近くになり、引き返そうとしている最中の突然の出会いでした。30cmはあろうかという大型の野鳥が前方の樹木に突然やって来ました。見た瞬間に、ハイタカかツミ・トケン類のいずれかであるのは間違いないと思い気持ちが高ぶりました。

 

すかさずレンズを構え、D7100のやや遅めのオートフォーカスがじっくりとピントを合わせその野鳥の姿を捉えます…それはジュウイチでした。標高1000m前後の渓流沿いのポイントでしたのでオオルリの巣を探していたのでしょうか。筆者にとっては初見の野鳥でしたので、これは何とか記録として残したいと思いました。ジュウイチまで30メートルは離れていたと思いますが、順光であり枝にとまったまま動かないので D7100 の信頼性の高いオートフォーカスであればピントは問題ないと思っていました。あとはブレずに撮れるかどうかですが、過去の経験上、低速SS限界はあらかじめ1/160に設定していたため、手持ちでもこのくらいの設定であれば問題ありません。とにかく気持ちに余裕がなく設定を見直すヒマはありませんでした。連写してブレずに撮れる事を祈りながらシャッターを切ります。

 

初回の撮影時には SanDisk Extreme 45MB/s タイプのSDカードを使用していたため、バッファに余裕が無く連写時に待たせられる事が多かったのですが、今回はその後追加購入した SanDisk Extreme Pro 95MB/s タイプを導入していました。ジュウイチがコチラを向いたときにシャッターを切り、向こうを向いたら連写を中止します。高速書き込みの SanDisk Extreme Pro 95MB/s タイプであれば、このような多少インターバルのある撮影では殆どバッファフルにならず、とても快適に撮影が出来ました。このときはメディアを新しいのに変更していてとても良かったと感じた撮影になりました。

 

30枚ほどシャッターを切ったところでジュウイチは奥に飛び去りました。緊張の画像チェックです。夕刻の撮影のため、順光でもISO感度は2500まで上昇していました。シャッター速度を変更するヒマはありませんでしたし、これ以上落とすとブレる危険も増大しますのでこれは手持ち撮影では仕方の無いところです。緊張していてしっかりホールディングは出来なかった撮影でしたが、半分の15枚程度はブレずに撮れていました。ピントも D7100 は信頼性が高くこちらも問題ありません。

 

今回は、高感度+30メートルというやや厳しい条件での撮影になりましたが、結果としてはまずまずの写真が撮れたと思っています。画像クリックで6000×4000ピクセルのフルデータが見れますので、是非画像をご覧ください。高感度と遠距離撮影により解像感はかなり落ちていますが、ジュウイチの姿はしっかり捉えています。D7100のようなローパスレス&超高解像ボディでは、純正の大砲レンズであればよりしっかりと解像すると思いますので、このあたりはタムロン150-600mmは低価格のズームとしてはよく頑張っているという評価が適切な表現になるでしょう。

 

少し絞ってF8で撮影すれば解像感はもう少し増したと思いますが、ISO感度が更に上昇することに加え、背景のボケをこれ以上硬くしてしまうとジュウイチが引き立たなくなってしまいますので、開放での撮影をセレクトしました。背景との距離差があり、ボケ量に余裕があれば少し絞って撮影してもよいと思います。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル カケス
後日、ジュウイチを撮影したポイントに再度赴くとカケスが新緑のカエデの上で青虫を採餌していました。被写体との距離は先日のジュウイチとほぼ同じ30m程度あり、遊歩道から見下ろす感じの撮影で、背景をぼかして被写体を浮かび上がらせるような状況ではなかったため『 F8 』まで絞って撮影を試みました。

 

光の条件などは先日のジュウイチと異なりますので厳密な比較にはなりませんが、やはり被写体まで距離があることもあり『 F8 』まで絞って撮影した今回のカケスの方がシャープに写っています。画像クリックでフルデータ( 4000 × 6000 ピクセル)をご確認ください。特に、被写体まで距離がある場合は少し絞ってシャープに写すか、背景のボケ量で被写体を浮かび上がらせるほうを優先するかはその時の状況によると思います。参考になれば幸いです。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル ミソサザイ
樹木の影になる暗所でミソサザイがさえずっていました。ミソサザイ自体が暗めの体色である野鳥な上に光が差さない場所であったため、ISO感度が6400まで上昇してもシャッター速度は1/100までしか確保できないほどです。さらに、距離が 5m 程度と近すぎるために頭部にピントを合わせると尾羽の付近はアウトフォーカスになるような状況でしたが、このような暗所でも -2EV 対応のオートフォーカスが性能を発揮して問題のないピント精度を得られることが出来ました。

 

ただ、フォーカスのスピードが極端に落ちたためさえずっている(野鳥が動かない)状態でなければとても撮影はできませんでした。動きモノでこの暗所にオートフォーカスで対応するには相当フレーミングをしっかりしないと難しいと思います。また、外側のフォーカスポイントでは迷ってばかりでまったく捉える事ができませんでしたので中央のポイントで捉えてからフォーカスロックで構図を微調整し撮影しています。条件は限られますが、やはり APS-C機最強の -2EV 対応のオートフォーカスシステムは非常に有用だと感じた撮影になりました。

 

 

 

 

 

『 Nikon D7100 でタムロン150-600mmを使用しての感想 』
キヤノンモデルとの比較では概ねニコンモデルの方が好印象という感想を持ちました。オートフォーカスのピント精度はニコンの方がよいとは事前予想していましたが、VC の手振れ補正が予想以上によいので 必然的にOKカットが多くどの画像をサンプルに使用するかを選ぶのもどちらかというと楽しい作業になりました。キヤノンモデルのサンプルをこれまでいくつも用意してきましたが、特にAPS-C機においては決定的な場面をいくつもブレやピント精度の問題でダメにして来ましたので、実はつらい部分もかなりあったというのが正直なところです。

 

飛びモノに関しては、まで検証しておりませんので何とも言えません。フォーカスリミッターが有効な15m以上の被写体であれば全く問題ないと思いますが、15m以内に入ることがあるコミミズクの飛翔シーンなどでは、オートフォーカスが遅いこととバッファが少ない(高感度を使うと更に減少)ことがダブルパンチになる可能性があるので、特にAPS-C機においてはキヤノンモデルの方が優位性が高いのではないかと予想しています。このレンズにおけるAFでの飛翔シーン撮影は、15m 以内に被写体が入るか入らないかでまるで印象が異なってくると言えるでしょう。

 

とまりものに関してはオオルリのカットが特に印象深いのですが、ある程度の距離があっても、暗い場所であっても、しっかりしたピントが得られること。瑠璃色の質感を出来るだけキープするために低感度で撮りたいため、それをサポートする手振れ補正の VC 機能。背景の良いポジションへ速やかな移動を可能にする、抜群の機動性を備えた軽量なレンズ。このカットが撮れた時は本当に嬉しく思いました。また、タムロン 150-600mm はキヤノンモデルではピント精度と VC機能という機材に要求するベース的な性能の部分に常に不安がつきまとい、それは価格の安いレンズだから仕方ないという感覚で使用していましたが、ニコンモデルの使用においては多くの部分が解消されました。

 

600mm + APS-C機の1.5倍で約900mm相当の焦点距離を手持ちで運用できる上に、画質は大砲レンズには及ばないもののかなり優秀。更に新品で25万円程度で揃えられる野鳥撮影機材と、これはほぼ全員にオススメできる組み合わせの機材だと思います。欠点としては、高感度画質が良くないので VC機能を当てにしてSSを1/100〜1/250程度で撮影する事、またバッファが『とても少ない』のでメディアは最高性能のものを用意する事があげられます。また、縦位置撮影のときにホールディングが良くなり手振れが抑えられることとマルチセレクターの使い勝手が抜群なので、高額ですが縦位置グリップ MB-D15 も装着が望ましいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 『 D800E 』 タムロン 150-600mm 実写撮影サンプル
続いて『 D800E 』にて撮影を行いました。D7100の使用後でしたのでVC の効きにはある程度期待できること、更にD7100同様の高精度AFを使用して、フルサイズの3600万画素を受け止められるだけの描写性能がタムロン 150-600mm に備わっているのかに注目して撮影に臨みました。ボディとレンズの価格的には少々アンバランスであり、この組み合わせでの使用を検討されている方は多くないかもしれませんが、フルサイズとAPS-C機の違いも参考になればと思います。それでは作例と共に使用感を述べて行きたいと思います。今回も、全画像全て手持ち撮影です。

 

また、画像クリックで得られるフルデータはトリミングしておらず、全て ViewNX2 で露出調整(最大±1EV以内)の上、『 輪郭強調 1 』でTIFF出力しています。その後フォトショップにてコントラスト、カラーバランス等を微調整してからJPEG出力しました。『 シャープネス 』は一切手を加えていません。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル イソシギ
まずは、川べりに居るイソシギを発見しました。被写体まで 20〜30m と少々距離がありましたが、さすがに D7100 と同様に高精度のオートフォーカス性能だと感じました。オートフォーカスの速度的には D7100 と全く変わらず最後の追い込みに時間を掛けているようで、トータルでもキヤノン機よりはスピードで劣る印象です。キヤノン機はフルサイズとAPS-C機で速度・精度共にかなり違いますが、ニコン機はプロ機以外ではオートフォーカスの性能に大きな差は無いようです。

 

最初の撮影なのでシャッター速度は 1/250 に設定してみましたが、D7100 と比べるとブレている画像が多いです。D800E はミラーショックが極めて大きいカメラなので、この振動を VC 機能がしっかり吸収できていないのかも知れません。ただ、キヤノンのAPS-C機のように酷い打率ではなく、やはりこのレンズのニコンモデルはキヤノンモデルより VC がよりしっかり機能しているのは間違いないでしょう。感覚的な話で申し訳ありませんが、手持ちで1/250でシャッターを切った時のブレない打率としては 『 D7100 - 80% 』、『 D800E - 50% 』、『 キヤノンフルサイズ機(静穏連写モード)- 30% 』、『 キヤノンAPS-C機(高速連写モード)- 10% 』このくらいの違いがあるように思います。D7100 の時は打率がよいので 1/160 に落として撮影しましたが、D800E の方は少し冒険的な設定になってしまいそうなので 1/250 を基本的な設定として撮影しました。

 

フルサイズで距離もあり被写体は小さいですが、全体的な雰囲気は抜群でさすがに最高画質機と言った印象です。周辺減光もそれなりにありますが、被写体が引き立つのでむしろ減光は歓迎すべきかもしれません。このような生息環境も踏まえたイメージとしては、D800E と タムロン 150-600mm の組み合わせはかなり良いように思いました。

 

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル カヤクグリ
その後、別の日に違う場所で撮影したものですがオートフォーカスの考察として作例をあげておきます。暗所で、ほぼ常に動いているカヤクグリを AF-C で追いましたが、見ていただいておわかりように画としてまとまっておらずベストショットを逃しました。このような被写体はニコン機では非常に撮影が難しく思い通りの撮影ができなかったというサンプルです。

 

D7100 のところでもキヤノン機との比較で高精度だが速度が遅いと述べましたが、被写体により得意不得意がはっきり分かれるなとこのカヤクグリを撮影していて強く思いました。オオルリのようなヒタキ類はある程度静止している時間があるので、速度が多少遅くても高精度なフォーカスが有利ですが、カヤクグリのように頻繁に動き回り、しかもそれが暗所である場合にはニコン機のフォーカス速度では被写体に追従すること自体が難しいです。更にフォーカスリミッターが効かない15m 以内での撮影だったことも拍車をかけました。これまでは、全面的にニコンモデルの方が良いように感じてきましたが、この時はそれが覆った撮影となりました。キヤノンのフルサイズモデルであれば、タムロン 150-600mm でもかなりのオートフォーカス速度が期待できますので タムロン 150-600mm でも恐らくベストショットが撮れていたのでないかと思います。

 

今回の考察は、あくまで タムロン 150-600mm とニコンボディの組み合わせでの話です。恐らくニコンの純正AF-S 80-400mm VR や純正大砲レンズであれば、ニコンボディでも速度は出ますしフォーカスリミッターもより有用な範囲での設定が可能ですので問題なく撮影できたでしょう。タムロン 150-600mm は最短が 2.7m と非常に近距離までフォーカスが出来ることと、フォーカスリミッターの設定範囲が 15m 区切りであること、更にニコンボディでは速度が遅いという3つのマイナス要素が重なって厳しい撮影になったという一例です。撮影対象としては、やはり暗い場所を動き回るような小鳥類は全面的に撮影が難しく、これらの被写体はキヤノンモデルの方が撮影できる確立が高いでしょう。

 

最後に、高感度の画質についてですが、さすがにフルサイズだけあって D7100 比ではISO感度2段分程度は高感度画質が良いように思います。トリミング不要なほど被写体に近づけるような場合には、極めて質の高いイメージを得ることができるでしょう。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル オオルリ捕食
オオルリが虫を捕食しました。このような、ある程度インターバルのある連続シーンでは連写性能よりもバッファ量がものをいいます。良いなと思って連射をしていると、突然向きが変わり更に良い状態になったりすることがこういうシーンでは起こりますが、D7100 の少ないバッファ量では最初の段階でバッファがフルになってしまい、後から発生した好況に対してはバッファの開放待ちでシャッターを押すはめに陥り撮り逃すリスクが極めて高いです。

 

D800E は SD と CF のデュアルスロットですが、CF の方が基本的に書き込みが速いので SD は予備のスロットとして使うと良いでしょう。このようなオオルリの食事シーン程度であれば向きがよい時だけ連写すればほぼメディアの書き込み待ちになるような状況はありません。結果として数十枚はこのときシャッターを切りましたが、鳥のポーズと咥えている餌の位置が良いのはこの一枚だけでしたので、ある程度枚数を切ることの重要性を感じました。D7100 で撮影しているときにこのシーンに出会わなくてよかったです。

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル ベニヒワアップ
カラマツ林をうろついていると、遠くから余り聞いたことのない野鳥らしき声が聞こえてきます。もしかすると近くに移動してくるかもしれないと思い、しばらく待ってみる事にしました。すると、運良く近くの樹木の裏側に見たことの無いような小鳥がやってきました。飛んだ来た姿では種類はわかりませんでしたが、見たことのない野鳥であることは間違い無さそうです。まずは、しゃがんで体勢を低くしてからおそるおそる樹木の裏側が見える位置に移動します・・・ ・・・ ・・・ なんと!そこに居たのはベニヒワの雄でした。

 

少し高いところに居たので、写真にはならず低い位置に降りて来ることを願いさらに待ちました。更に運が良いことに、10メートル以内の低い樹木に降りて来ました。絶好の撮影チャンスです!この時は、キヤノンの純正大砲レンズと D800E + タムロン 150-600mm の組み合わせを携行していましたが、これはこのサイトの作例を撮る最高の被写体だと思い、迷わず D800E + タムロン 150-600mm を使用することを決断。ベニヒワを驚かせないように、ゆっくりとレンズを持ち上げファインダー内に入れます。フルサイズの600mmでもかなり大きくベニヒワの背中側が見えてきました。確実に10m以内の至近距離です。D800Eはシャッター音が暴力的に大きいので、レリーズしたらベニヒワを驚かせてしまうかも・・・チャンスは数枚だけかも・・・しれない。ベニヒワのお腹のピンクが見える向きに変わってくれるまでレリーズは控える事にました。飛ばれてしまったら諦めよう・・・そう思ったときに願いが通じ、ベニヒワがお腹が見える横向きの位置に小枝を移動しました。

 

今こそシャッターを切るタイミングです!距離は近いしニコンのオートフォーカス精度は高いから問題ないだろう・・・この組み合わせでの機材の信頼性が高いことは理解していました。問題はブレずに撮れるかどうかです。VC よ頼むぞ!脇を締めつつ力が入り過ぎないよう、レンズを固定するように意識してレリーズを開始しました。

 

これだけ距離が近いとやはり D800E のレリーズ音は爆音だったようで、5枚撮った所でベニヒワは奥に飛び去ってしまいました。『 驚かせて悪かったね。許しておくれ。』僅か5枚でも撮れている感触はありましたので、まずは撮らせてくれたベニヒワに感謝の念が湧いてきました。少し興奮が収まったところで、いよいよ画像チェックです。ブレているのが1枚、顔が向こうを向いてしまったのが2枚、使えそうなのが2枚残りました。使える2枚のうち1枚は下を向いてくれていたので、頭部が影を作り胸元のピンク色が強調されていました。これに採用決定です。ほんの少し顔の向きが変わるだけで全く違う写真になります。選べる画像が多いに越したことはないと強く感じた撮影になりました。キヤノンモデルであれば VC の信頼性が低いので選べる画像が少なく撮れなかったかもしれません。

 

D800E + タムロン 150-600mm の至近距離で撮影した作例はどうしても1枚は必要だと考えていましたので、それをベニヒワで実現できたことはホントに嬉しい限りです。実売価格11万円のレンズですが、タムロン 150-600mm でもここまで写りますという筆者の思いが詰まった1枚です。是非、画像クリックでフルデータ( 7360 × 4912 ピクセル)をご確認ください。

 

 

 

 

※この画像サンプルは、画像クリックでフルデータを見ることができます。
タムロン 150-600mm ニコン用 サンプル ベニヒワ引き
先のベニヒワを撮り終えたところで午前中の撮影は終了。休憩を挟んで午後も探鳥を行いました。お昼以降は余り野鳥の姿が見られませんでしたが、夕方になれば多少は野鳥に動きが出てくるかもしれない・・・そんな期待はもろくも崩れ去り、刻々と日没が近づいてきます。GW真っ只中で帰りは渋滞に巻き込まれることも考えると、そろそろ引き上げなければならない時間になりました。

 

あと一回りしたら帰ろう。そう思った矢先に、聞き覚えのある声が遠くから聞こえて来ました。ベニヒワです!午前中に撮影した場所から少し離れていたところでしたが、こちらに移動していたようです。とても近づけないような場所に居たうえに、アップは午前中に撮影できているので今回は引いた画を撮る事にしました。

 

夕方なので光が横から差し込む事もあり、日陰にベニヒワが来ないとあの独特の淡い赤色が引き立ちません。ベニヒワが枝を移るごとにポジションを変え、ベストなタイミングを待ちます。そしてちょうど理想的な位置にベニヒワの雄がやってきました。

 

カラマツが真っ直ぐ伸びているので、これは縦位置が相応しいと判断し縦位置で構えます。このアングルを得るためには少々足場の悪いところに登らねばならず、更に撮影時はかなり強めの風が吹いており、バッテリーグリップ MB-D12 を装着していても、手振れはある程度覚悟しなければならない状況でした。ただ、今回は距離があるのでベニヒワをレリーズで驚かせる心配はありません。問題は、30m近くも離れている被写体へのオートフォーカス精度でした。

 

ここは AF-C で多少ピントにランダム性を持たせたほうがよいと判断し、オートフォーカスの設定を変更。レリーズを開始します。足場が悪く風にレンズがあおられるので、ベニヒワにフォーカスを当て続けるのも一苦労です。少しフォーカスポイントが外れただけでピントが迷い始めるなど、多少難儀はありましたが、至近距離での撮影のような緊張感はなく30枚くらいはレリーズできました。さぁ、画像チェックです。・・・ ・・・ ・・・ 8枚くらいはピント・ブレのないいわゆるOKカットがありました。30メートルも離れた小鳥にピントを合わせるのは極めて難しいのですが D800E はさすがの高精度オートフォーカスです。拾える画像は多いほうだと思いました。距離が離れた野鳥をどこまで解像できるかというのは、レンズの性能において重要なポイントですが、タムロン 150-600mm でも何ら問題のない高品質なイメージを得ることができるというサンプルが撮影できたと思います。是非画像クリックでフルデータ( 4912 × 7360 ピクセル )を開いてベニヒワの姿をご確認ください。

 

D800E のフルサイズ3600万画素というスペックは、近距離よりもむしろこういう引いた画でこそ良さが活きてくるように思います。ちなみに、このイメージを D7100 の600mm側で撮影していたとしたら、ベニヒワとカラマツのバランスがどちらも中途半端になっていたと思います。雄大なカラマツにちょこんと可愛い赤い小鳥が居ることでより上品なイメージになっているのです。

 

では、D7100 で 400mm にズームアウトすれば換算画角 600mm なので同じようなイメージになるでしょうか?いえ、そうはなりません。タムロン 150-600mm の 400mm 域でのF値は 6.0 です。D800E なら 600mm F6.3 、D7100 なら 400mm F6.0 で同じ画角のイメージという事になりますので、当然背景のボケ具合からベニヒワの質感までまるで違ってくるでしょう。絞らないのも背景を出来るだけボカして小さいベニヒワを浮かび上がらせたいからであり、絞って被写体をよりシャープに写すことよりもそちらが更に重要なのです。野鳥を如何に表現するかという事においては、フルサイズのテレ側+絞り開放で、遠景がどれだけ写るのかというのは非常にレンズの描写性能を語る上で大事なことです。今回のベニヒワのサンプル2枚は、タムロン 150-600mm でもちゃんとした画質の写真が撮れるという事を皆様に伝える意味で、よいイメージを皆様に提供できたと思います。

 

 

 

『 Nikon D800E でタムロン150-600mmを使用しての感想 』
D7100 との比較で言うと、プラス面は、@余裕のバッファ容量で連続シーンに強い、A高感度・高解像度の優れた画質、が上げられます。マイナス面は@ミラーショックが大きくぶれ易い、Aシャッター音が大きく至近距離では野鳥が驚く、B値段が高い、Cカメラが重い、などでしょう。オートフォーカスの性能はどちらも互角で、大きな違いは感じられませんでした。キヤノン機との比較では D7100 と同様に『 ピント精度はよいがフォーカスの動きが遅い 』、『 手振れ補正は明らかにニコンモデルの方が優秀 』ということは言えると思います。

 

画質に関しては、フルデータのサンプルを見てご判断頂ければと思いますが、筆者の感想では APS-C の 2400万画素、フルサイズの 3600万画素のどちらもしっかりと受け止めるだけの描写性能が タムロン 150-600mm には備わっていると思います。

 

最後のベニヒワのサンプルに関しては、ややドキュメント的なレポートになってしまいましたが、実売価格11万円の タムロン 150-600mm でも緊張するようなシーンをしっかりとモノにできる信頼性があることはお伝えできたと思います。飛翔シーンに関しては、まだテストできていませんがコミミズクのような被写体が今の時期は居ませんので、もうしばらく後のレポートになると思います。カヤクグリのサンプルである程度判断できるとは思いますが、暗い場所かつフォーカスリミッターの効かない15m以内に被写体が入る、これらの条件が重ならなければそれほど問題にはならないと思います。キヤノンモデルではフォーカスが手前から∞に向かう途中で止まってしまう現象が頻発しますが、ニコンモデルは最初から動かないか迷ってひたすら前後を往復するという純正と同じ動きをしますので、使いやすいやすさはニコンモデルの方が上でしょう。

 

結論として、 タムロン 150-600mm はテレ側の 600mm F6.3 の写りがボケ量・解像力ともに優秀で、低価格、軽量、更にニコンモデルであれば手振れ補正も有効で、フォーカス精度も良好、と野鳥撮影においては極めて優れたレンズであると言って良いと思います。D800E はもちろん良いのですが、ブレ発生率上昇などのマイナス面も無視できないものがあり、そもそも D7100 比では野鳥が小さく写りますので、どちらかというと野鳥に近づけるスキルがあったり、鳥が小さくても写真にできる人向けの玄人嗜好な組み合わせです。キヤノンモデルも含め タムロン 150-600mm を野鳥撮影で使うなら D7100 が低価格で万人向けのベスト機材であると D800E を使用してより強く思いました。ただし、D7100 のバッファが少ないのが大問題なのでメディアは SanDisk Extreme Pro 95MB/s タイプなど最高のものを用意しましょう。

 

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